テュルク諸語

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チュルク語族
話される地域アナトリア、中央アジア、中国西部、
シベリア南部、シベリア東部など
言語系統アルタイ諸語に含める説があるが、現在は言語連合とする見方が有力)
祖語テュルク祖語
下位言語
  • カルルク語群
  • キプチャク語群
  • オグール語群
  • オグズ語群
  • シベリア・テュルク語群
ISO 639-5trk
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チュルク語族の分布
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言語ごとの人口割合

チュルク語族(チュルクごぞく、英語: Turkic languages)、またはテュルク語族(テュルクごぞく)・突厥語族(とっけつごぞく)は、東ヨーロッパから中央アジア、北アジア(シベリア)に至る広大な地域で話される語族である。

概要

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分布がチュルク語族と隣接するモンゴル語族ツングース語族とは、語彙、形態、統語構造、特定の音韻的特徴においていくつかの言語の特徴を共有する。このため、伝統的にチュルク語族とこれらとをあわせてアルタイ諸語という一つの語族を形成するという説(アルタイ仮説)が唱えられてきたが、現在では多くの言語学者はその説を否定している。ただし、こうした類似性は、これらの言語グループが長期間にわたり地理的に近接し接触した結果生じた「言語連合」(地域的特徴)を示すものとして依然として重要視されている。

チュルク諸語はその分布の広大さに比べて言語間の差異は(一部の例外を除き)比較的小さく、特にオグズ、キプチャク、カルルクといった主要な語群の各語群内では言語間の共通性が大きく、意思疎通は容易であると言われる。このため、チュルク諸語全体をひとつの言語、「チュルク語」と見なし、各言語を「チュルク語の方言」とする立場もありうる。 しかし、オグール語群に属するチュヴァシ語や、シベリア・テュルク語群のサハ語、およびハラジ語などは、他の大多数の言語とは大きく異なっている。

歴史的に、チュルク語族はまず「オグール語群(ブルガール語群)」と「一般チュルク語(Common Turkic)」の二つに大別される。オグール語群は、他の全てのチュルク語(一般チュルク語)が /z/ や /š/ を持つ単語において /r/ や /l/ を示す(例:チュヴァシ語の「九」は tăxxăr、トルコ語 dokuz)などの顕著な音韻的差異があり、相互理解可能性はない。チュヴァシ語を除く現存のチュルク諸語はすべて「一般チュルク語」に属する。

特に3語群(オグズ語群、キプチャク語群、カルルク語群)の話者はイスラム教を受け入れた結果、アラビア語ペルシア語から多くの語彙を取り入れているため、語彙上の共通性が大きい。

政治的経緯から、トルコ語を除く諸言語はロシア語からの借用語も非常に多い。

分類

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テュルク諸語は、音韻などの特徴からいくつかの語群に分類される。歴史的にまずオグール語群と一般チュルク語に大別され、さらに一般チュルク語が地理的・言語的特徴から4語群に分類される。ハラジ語は、一般チュルク語から早期に分岐したか、あるいはオグール語群と並列的な分岐をなすとも考えられており、しばしば独立して扱われる。

分類基準

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チュルク語族の分類には、伝統的に以下の等語線が用いられる:

  • r音化 (あるいは一部の見解では z音化)、例: 「9」を意味する単語 tokkuz の最後の音。これは、/r/ を示すオグール語群と、/z/ を示す他のチュルク諸語とを分離する。この場合、r音化とは、この語群における *-/r/, *-/z/, *-/d/ から /r/ への、*-/k/, *-/kh/ への発達を指す。 チュルク諸語におけるr音化とl音化に関する議論については、Antonov and Jacques (2012) を参照。
  • 母音間の *d, 例: 「足」を意味する単語 *hadaq の2番目の子音。
  • 接尾辞末の -G, 例: *tāglïg などに見られる接尾辞 *lIG。

追加の等語線には以下が含まれる:

  • 語頭の *h の保持, 例: 「足」を意味する単語 *hadaq。これはハラジ語を周縁言語として分離する。
  • 硬口蓋鼻音 *ń の非鼻音化, 例: 「月」を意味する単語 *āń。
等語線 共通チュルク語 オグール語
シベリア オグズ カルルク キプチャク サヤン アルグ
古テュルク語 アルタイ語 西ユグル語 ハカス語 サハ語(ヤクート語) 富裕キルギス語 トルコ語 トルクメン語 アゼルバイジャン語 ガシュガーイー語 ウズベク語 ウイグル語 タタール語 カザフ語 キルギス語 トゥバ語 ハラジ語 チュヴァシ語
z/r (「9」) toquz toɣus dohghus toɣïs toɣus doɣus dokuz dokuz doqquz doqquz toʻqqiz toqquz tuɣïz toğyz toɣuz tos toqquz tăχăr
*h- (「足」) adaq ayaq azaq azaq ataχ azïχ ayak aýak ayaq ayaq oyoq ayaq ayaq aiaq ayaq adaq hadaq ura
*VdV (「足」) adaq ayaq azaq azaχ hadaq azïχ ayak aýak ayaq ayaq oyoq ayaq ayaq aiaq ayaq adaq hadaq ura
*-ɣ (「山」) tāɣ taɣ taɣ tıa daχ dağ* dag dağ daɣ togʻ tagh taw tau daɣ tāɣ tu
接尾辞 *-lïɣ (「山がちな」) tāɣlïɣ tūlu taɣliɣ χayalaaχ daɣluɣ dağlı dagly dağlı

Example

daɣlïɣ togʻlik taghliq tawlï tauly tōlū tullă

※トルコ語の標準的なイスタンブール方言では、dağdağlı に含まれる ğ は子音として発音されず、直前の母音をわずかに長音化させる。

以下に、各言語のうち主要なもののみを例示する。

オグール語群(ブルガール語群)

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  • チュヴァシ語
  • † ブルガール語(ヴォルガ・ブルガール方言、ドナウ・ブルガール方言)
  • † ハザール語
  • † フン語 - フン族(系統は未決定だが、テュルク諸語のブルガール語群とする説が有力)
  • テュルク・アヴァール語(英語版)

一般チュルク語

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  • 南西語群(オグズ語群)
    この語群の音韻的特徴は、前舌母音を伴った破裂音が有声化することである。(例: トルコ語 gör-kör- 「見る」)
    • 西オグズ諸語
      • 古アナトリア・トルコ語(英語版)(11世紀-15世紀)
      • オスマン語(15世紀-19世紀)
      • ペチェネグ語(英語版) -(ペチェネグ。ペチェネグ人はガガウズ人に近い民族とされる。)
      • トルコ語(20世紀-現在、共和国トルコ語とも)
      • アゼルバイジャン語(アゼリー語)
      • ガガウズ語
    • 東オグズ諸語
    • 南オグズ諸語
      • ガシュガーイー語
    • サラール語
  • 北西語群(キプチャク語群)
    この語群の音韻的特徴は、*j が子音強化を起こし、[dʒ]や[ʒ]になることである。
    • 北キプチャク諸語
      • バシュキール語
      • タタール語(ヴォルガ・タタール語とも。ブルガール語の影響を受けている)
      • 古タタール語(英語版)(中世 - 19世紀、en:Turki)
    • 西キプチャク諸語
      • クムク語
      • カラチャイ・バルカル語
      • クリミア・タタール語
      • カライム語
      • クリムチャク語
      • ウルム語
      • † クマン語 - クマン人(キプチャクとも)
      • キプチャク語(英語版)
    • 南キプチャク諸語
      • カザフ語(キプチャク語とも)
      • カラカルパク語
      • ノガイ語
    • 東キプチャク諸語
      • キルギス語
  • 南東語群(カルルク語群、ウイグル・テュルク語群、チャガタイ語群とも)
    • 西カルルク諸語
    • 東カルルク諸語
      • 現代ウイグル語
      • イリ・チュルク語(キプチャク語やチャガタイ語の影響が大きい)
      • ホレズム語(英語版)
      • † チャガタイ語
      • ロプ語(英語版)
      • エイヌ語
  • 北東語群(シベリア・テュルク語群)
    • † 古テュルク語
    • † 古ウイグル語
    • 南シベリア諸語
      • トゥバ語
      • トファ語
      • ソヨト語(Soyot-Duhaca language)
      • ハカス語
      • ショル語
      • チュリム語
      • アルタイ語
      • 富裕キルギス語
      • 西ユグル語
    • 北シベリア諸語
      • サハ語(ヤクート語)
      • ドルガン語
    • 西シベリア諸語
  • 分類が諸説ある言語
    • ハラジ語

文法

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チュルク語族の言語は、目的語や述語に接尾辞(助詞に相当する機能も含む)や活用語尾が付着する膠着語で、母音調和(単語内の母音が前方性や円唇性などにおいて揃う現象)を行うことを特徴とする。文の語順も基本的に日本語に近く主語‐目的語‐述語 (SOV) になる言語が多い。

その他の主な文法的特徴としては、以下のような点が挙げられる。

  • 文法性(男性・女性など)の区別や、冠詞を持たない。
  • 名詞は、文中での機能を示すために格接尾辞を付加して変化する。基本となる格(主格、属格、対格、与格、処格、奪格)は多くの言語で共通しているが、接尾辞の具体的な形態は母音調和の規則や各言語の音韻変化によって異なる。以下に「家」を意味する名詞の格変化の例を示す。
名詞の格変化の比較
語幹(主格) 属格(〜の) 対格(〜を) 与格(〜に) 処格(〜で) 奪格(〜から)
トルコ語
(オグズ)
ev evin evi eve evde evden
カザフ語
(キプチャク)
üy üydiñ üydi üyge üyde üyden
ウズベク語
(カルルク)
uy uyning uyni uyga uyda uydan
トゥバ語
(シベリア)
bajïñ bajïñnïñ bajïñ bajïñga bajïñda bajïñdan

(注:上記は一例であり、接尾辞は母音調和や直前の音により異形態を持つ。ウズベク語は母音調和がほぼ失われている。)

  • 名詞に「私の」「あなたの」といった意味の所有接尾辞が付加される。
所有接尾辞の比較
人称 トルコ語
(ev)
カザフ語
(üy)
ウズベク語
(uy)
トゥバ語
(öğ)
1人称単数(私の〜) evim üyim uyim bajïñïm
2人称単数(あなたの〜) evin üy uying bajïñïñ
3人称(彼/彼女の〜) evi üyi uyi bajïñï
  • 動詞の形態は非常に豊富で、アスペクト・時制のほか、否定、受動、可能、使役などを表す接尾辞が語幹に付加され、複雑な形態を成すことがある。
  • 形容詞は名詞を修飾する際に変化しない(例:トルコ語 büyük ev「大きい家」、büyük evler「大きい家々」)。
  • 前置詞の代わりに、名詞の後ろに置かれる後置詞が用いられる。
  • 英語の "that" のような従属接続詞や関係代名詞は本来持たず副動詞(分詞)を用いて複文が構成される。

音韻

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チュルク諸語、特に一般チュルク語は、その広大な分布にもかかわらず、音韻体系において顕著な共通性を持つ。

母音

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多くのチュルク語は、8つの短母音(i, y, ɯ, u, e, ø, a, o)を持つ体系を基本とする。これらの母音は、以下の3つの特徴によって組織化されている。

  1. 前後 (Palatal / Front-Back): e, i, ø, y (前舌母音) vs a, ɯ, o, u (後舌母音)
  2. 円唇 (Labial / Rounded-Unrounded): ø, y, o, u (円唇母音) vs e, i, a, ɯ (非円唇母音)
  3. 広狭 (Height / High-Low): i, y, ɯ, u (狭母音) vs e, ø, a, o (広母音)

この体系的な対立が、後述の母音調和の基盤となっている。一部の言語では長母音と短母音の対立も存在する。サハ語やトルクメン語の長母音はチュルク祖語に由来すると考えられるが、トルコ語やキルギス語の長母音は有声軟口蓋音の代償延長である。

母音調和

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チュルク語族の最も顕著な音韻的特徴は、厳格な母音調和である。これは、一つの単語(語幹+接尾辞)内で共起できる母音の種類に制限がかかる現象である。

  • 前後調和(口蓋調和): 単語内の全ての母音は、前舌母音か後舌母音のどちらかに統一されなければならない。接尾辞は、接続する語幹の母音に応じて、前舌母音を持つ異形態と後舌母音を持つ異形態が切り替わる。
    • 例(トルコ語の複数接尾辞 -lAr): ev「家」(前舌) + -ler → evler「家々」 / at「馬」(後舌) + -lar → atlar「馬たち」
  • 円唇調和: 多くの言語では、前後調和に加えて円唇性に関する調和も存在する。狭母音(i, y, ɯ, u)を持つ接尾辞が、直前の音節の母音の円唇性に影響される。
    • 例(トルコ語の属格接尾辞 -In): ev-in「家の」(前・非円唇) / göz-ün「目の」(前・円唇) / at-ın「馬の」(後・非円唇) / kol-un「腕の」(後・円唇)
  • 唇音牽引: 円唇母音の後で低母音が円唇同化する母音調和である。キプチャク語群とシベリア・チュルク語群に存在する。

ただし、アラビア語・ペルシア語などからの借用語や一部の複合語では、母音調和の規則が適用されない場合がある。

子音

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子音体系の特徴として、/k/, /ɡ/ (軟口蓋音)と /q/, /ʁ/ (口蓋垂音)の対立を持つ言語が多い(例:ウイグル語、カザフ語)。後舌母音の文脈では /q/, /ʁ/ が、前舌母音の文脈では /k/, /ɡ/ が現れる傾向があり、母音調和と連動している側面もある。

また、固有のチュルク語彙においては、語頭に立たない子音(/r/など)が存在するという音素配列上の制約が見られるが、借用語の増加によりこの制約は緩んでいる。

歴史

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原郷

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チュルク語族の原郷は、トランス・カスピ海の草原と北東アジア(満洲)の間のどこかにあることが示唆されており、南シベリアとモンゴルの近くの地域がチュルク系民族の「アジア内の原郷」であることを示す遺伝的証拠がある。同様に、ユハ・ヤンフネン、ロジャー・ブレンチ、マシュー・スプリッグスを含む数人の言語学者は、現代のモンゴルが初期のチュルク語の原郷であると示唆している。

およそ紀元前1千年紀の初頭の間に、原チュルク人と原モンゴル人の間で広範な接触が起こった。 2つのユーラシア遊牧民グループの間で共有されている文化的伝統はen:Turco-Mongol traditionと呼ばれている。2つのグループは同様の宗教システムであるテングリズムを共有しており、チュルク諸語とモンゴル諸語の間には多くの明らかな借用語が存在する。借用は双方向だったが、今日、チュルク諸語の借用語はモンゴル諸語の語彙の中で最大の外来語彙の構成要素を成している。

また、チュルク祖語時代に中国語と接触したことを示す借用語も存在する。

Robbeets(etal.2015、etal.2017)は、チュルク語族の原郷は満洲のどこかにあり、モンゴル語族、ツングース語族、韓国語族(日本語族の祖語を含む)の原郷に近く、これらの言語は共通の「トランスユーラシア語」(Transeurasian) を起源とする。「トランスユーラシア語族」の証拠はNelson et al. 2020、Li et al. 2020 によっても提示されている。

有史時代

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テュルク諸語の最古の文献は、第二可汗国時代の686年から687年頃に建てられたチョイレン銘文と呼ばれる突厥碑文で、古テュルク文字(テュルク・ルーン文字、突厥文字)で書かれた。その他の突厥碑文は、モンゴル高原の各所に残る。745年に突厥を滅ぼしたウイグルも古テュルク文字を受け継いだ。

モンゴル高原から中央アジアに移住した後、8世紀にはソグド文字を改良したウイグル文字を使用して古ウイグル語が書かれた。

この言語は天山ウイグル王国(856年 - 13世紀)を建てると公用語となった。なお、古ウイグル語は後述のチャガタイ語に連なる現代ウイグル語とは系統が異なる。

イスラム教を受け入れたカラハン朝(840年 - 1211年)では、アラビア文字テュルク語(トルコ語版)を書き取るようになり、『クタドゥグ・ビリグ』のような文学作品が著された。その後、中央アジアではチャガタイ語、アナトリアではオスマン語がそれぞれアラビア語・ペルシア語の要素を取り入れた典雅な文章語として発展した。

20世紀に入ると文章語の簡略化が進められ、各地の口語を基礎とし、ラテン文字キリル文字で書き表される新しい文章語が生まれた。しかし、依然としてイランなどではアラビア文字が使用されており、中国でも一度ラテン文字化が進められたテュルク系諸言語が1980年代にアラビア文字表記に戻されたので、現代テュルク諸語を表記する文字は大きく分けて3つ存在する。

ソ連崩壊後、旧ソ連のテュルク諸語ではキリル文字からラテン文字へ移行する動きが見られる(アゼルバイジャン語トルクメン語ウズベク語など)。

ロシアのタタール語などもラテン文字への移行を目指しているが、ロシア政府の介入によってラテン文字の公的使用は制限されている。

表記法(文字)

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チュルク諸語の表記には、歴史的に多様な文字体系が用いられてきた。現代においては、ラテン文字キリル文字アラビア文字の3つが主に用いられている。

歴史的な文字体系

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  • 突厥文字: 8世紀頃の突厥碑文(オルホン碑文など)に使用された最古の文字体系。
  • ウイグル文字: ソグド文字に由来し、8世紀以降のウイグル(ウイグル可汗国、天山ウイグル王国)で広く使用された。後のモンゴル文字や満洲文字の原型ともなった。
  • その他の文字: 宗教(仏教、マニ教、ネストリウス派キリスト教)の伝播に伴い、ブラーフミー文字、マニ文字、シリア文字なども限定的に使用された。
  • アラビア文字: 10世紀頃のカラハン朝によるイスラム教受容以降、中央アジア、アナトリア、東ヨーロッパなど広範な地域で支配的な文字となった。オスマン語やチャガタイ語といった文章語もアラビア文字で記された。

現代の主要な表記法

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ラテン文字(ローマ字)

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トルコ共和国が1928年に採用(トルコ語の表記)して以降、ラテン文字化はチュルク系諸民族のアイデンティティと連動する動きとなった。

ソビエト連邦でも1920年代後半から1930年代にかけて、アラビア文字に代わり「統一テュルク・アルファベット(ヤナリフ)」と呼ばれるラテン文字表記が導入されたが、1930年代末以降、後述のキリル文字に置き換えられた。

ソ連崩壊(1991年)後、旧ソ連のチュルク系諸国では再びラテン文字化への移行が急速に進んだ。

キリル文字

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ソ連は1930年代末から1940年代初頭にかけて、国内のチュルク系言語(および他の少数民族言語)の表記法をキリル文字ベースのものに切り替えさせた。

現在も、ロシア連邦内のチュルク系共和国の言語(タタール語、バシキール語、チュヴァシ語、サハ語など)の主要な表記法である。また、ラテン文字への移行を決定した旧ソ連諸国でも、依然として広く使用されている。

アラビア文字

]

歴史的に長く使用されてきたアラビア文字は、現在も以下の地域でチュルク諸語の表記に用いられている。

  • 中国・新疆ウイグル自治区: ウイグル語、カザフ語、キルギス語の表記にアラビア文字が公式に使用されている。
  • イラン: アゼルバイジャン語(イラン・アゼルバイジャン語)、トルクメン語、ガシュガーイー語など。
  • その他: アフガニスタン(ウズベク語、トルクメン語)、イラク(トルクメン語)など。

注釈

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  1. ^ 現在のブルガリア人はスラヴ語派のブルガリア語を用いるが、その先祖であるブルガール人は、バルカン半島にやって来るまでは、ブルガール語を話すテュルク系民族であった。なおブルガリアは、その後オスマン帝国支配を受けた経緯により、トルコ語(オグズ語群)の語彙も多く取り入れられている。
  2. ^ アヴァール語とは全く別の言語である。「テュルク系」説以外に、「モンゴル系」説を唱える学派もある。「テュルク系」説ではオグール語群に分類される。
  3. ^ イラン系言語の影響を強く受けた言語
  4. ^ 古ウイグル語は、仏教やマニ教の伝播に伴い、ウイグル文字のほかブラーフミー文字やマニ文字などでも書かれた。また、シリア文字系の文字もネストリウス派キリスト教徒によって用いられた)

出典

]
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関連項目

]
  • テュルク
  • テュルク祖語
  • テュルク諸国機構
  • テュルク文化国際機関
  • 共通テュルク文字

外部リンク

]
  • チュルク碑文テキスト
  • トルキスタン歴史文字
  • 現代チュルク語族 パムッカレ大学による現代チュルク語族の動詞活用と単語学習ゲームを収録した辞書。

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